日本は桜の国。国内には、野生種と栽培種をあわせると約300以上もの種類があるといわれます。最もよく知られるソメイヨシノは温暖地で3月下旬から咲き始めますが、なかには肌寒い1月下旬から咲き始める種類もあります。
カンヒザクラ 寒緋桜
別名/ タイワンザクラ(台湾桜)・ヒカンザクラ(緋寒桜)
中国南部〜台湾に分布し、沖縄では野生化している。別名のヒカンザクラはエドヒガン(江戸彼岸)やコヒガン(小彼岸)と混同されることからカンヒザクラが標準和名とされる。花は黒味をおびた濃紅色で下向き、全開しない。沖縄では1 〜2 月に開花するが、関東地方では2月中旬頃から開花する。1 月下旬から沖縄県内で開かれる桜まつりの種類は花が平開するリュウキュウカンヒザクラ(琉球寒緋桜)として区別されている。
カンザクラ 寒桜
別名/ アタミカンザクラ(熱海寒桜)
古くからの栽培品種で、ヤマザクラとカンヒザクラの推定交雑種。花弁は円形で縁はやや内側向きになり、全体の花形にまるみがある淡ピンクの桜。早咲き種の中でも特に早く咲く。
カワヅザクラ 河津桜
1955 年頃に静岡県伊豆半島の河津町で発見、オオシマザクラ系とカンヒザクラの推定自然交雑とされる桜。花はピンク色でソメイヨシノのように一斉に散らないのが特徴。河津町では通常2 月上旬から咲きはじめて約1 ヵ月で満開になるが、その年の気候で変化する。1992 年に第1 回河津桜まつり開催以降、早咲き桜として広く知られるようになり、最近は日本各地の公園などにも植栽されている。
ヒタチベニカンザクラ 日立紅寒桜
茨城県日立市固有の品種で、昭和40 年代に緑化運動の一環でJR 小木津(おぎつ)駅構内に植栽された樹が原木とされる。2006(平成18)年8 月に種苗法に基づき農林水産省に品種登録された。ヤマザクラ (山桜)とカンヒザクラ (寒緋桜)の交配種と推定されている。花は一重咲、淡紅色、1 月中旬から少しずつ開花し、3 月上旬に見頃を迎えて長い期間楽しめる。市内のかみね公園や多賀市民プラザなどに約280 本が植えられている。
ヨコハマヒザクラ 横浜緋桜
横浜の育種家・白井 勲氏が、オオシマザクラとタカネザクラの交配種ケンロクエンクマガイ(兼六園熊谷)にカンヒザクラを交配した品種。1985年に品種登録。3月中旬頃から緋紅色の大輪の花が咲くが、早咲き・中間咲き・遅咲きの3タイプがあるとされる。
トウカイザクラ 東海桜
シナミザクラやコヒガン、カンヒザクラが関係した栽培品種といわれる。花は淡紅色の小輪花で細長い卵型。樹姿がほうき型になり、促成栽培に向くことから山形県や富山県・長野県などで切り花生産される。品種名に混乱はあるが、切り花ではケイオウザクラで流通する。植栽では福島の花見山がよく知られる。
マメザクラ 豆桜
別名/ フジザクラ(富士桜)
本州(関東〜中部地方)に分布し、低山〜亜高山まで広く生育する。花が小さく樹高も他の桜ほど高くないのでマメザクラの名前がある。また、特に富士山周辺に多いことから別名フジザクラともいわれる。花弁は白〜淡紅色で形にも変化が多い。
ソメイヨシノよりやや早く咲くが、亜高山などでの開花は5 月になる。盆栽としても栽培される。変種としてブコウマメザクラ、クモイコザクラのほか、亜種に北陸〜山陰に分布するキンキマメザクラがある。
早春桜
マメザクラの園芸品種。花は大きくピンク色が濃い。
キンキマメザクラ 近畿豆桜
3月上旬から白または淡紅色の花を咲かせる。マメザクラに似るが萼筒がやや細長く、葉もひと回り大きいなどの点で区別できる。
シキザクラ 四季桜
マメザクラとエドヒガンの雑種といわれる。丈が低くても開花し、花が多く美しいことから各地で植栽されている。本来の見ごろは11 〜12 月上旬だが、二季咲き性で真冬もまばらに開花。
植栽地では愛知県豊田市小原地区が有名で、早春になるとソメイヨシノよりやや早く、秋ほどではないが多くの花が咲く。
コシノヒガンザクラ 越の彼岸桜
キンキマメザクラとエドヒガンの雑種、またはエドヒガンとマメザクラの雑種であるコヒガンの一品種ともいわれる栽培品種。花は淡紅色の中輪花。富山県砺波市にある「蝋山の越の彼岸桜自生地」は県の天然記念物に指定されている。長野県の高遠城址の桜もこれに含まれると推定される。
ヤブザクラ 藪桜
本州関東地方南西部に分布し、低山や丘陵地に生育する。マメザクラとエドヒガンの自然雑種で雑種名コヒガンのひとつの品種とされる。花弁は清楚な白色で、マメザクラより花も葉もより大きい。萼片は卵形、花柄に軟毛がある。同じ分布域にコヒガンの品種ホシザクラも分布し、ホシザクラの萼片は星形に見えるのが特徴。
コヒガン 小彼岸
エドヒガンとマメザクラの雑種とも考えられている桜。ソメイヨシノよりやや低く、枝が細かく分かれて花つきもよいので、観賞用に庭植えされたり、切り花として流通もする。花弁は淡いピンク色で、縁側が濃く、やや内側に巻き込む特徴がある。
エドヒガン 江戸彼岸
本州・四国・九州、中国や朝鮮半島にも広く分布はするが、生育地は限られる。高さ8m 前後のソメイヨシノより高く、20 m近くにもなる高木の桜。ソメイヨシは本種とオオシマザクラの雑種親としても知られる。花弁は淡紅〜白で小型。一本桜で有名な古木、根尾谷の薄墨桜(岐阜県)・神代桜(山梨県)・石割桜(岩手県)などの多くは本種とされる。ソメイヨシノよりわずかに早く咲くシダレザクラ(イトザクラ)は本種の枝が下垂するタイプ。花の萼筒部分が玉形に膨らみ、この特徴の桜にはコヒガンとコシノヒガンザクラがあるが少ないので、生育地ではほかの桜と一緒でも区別しやすい。
記・はしば
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